なぜ、MacBookなどのApple製品にはアルミニウムが長年使われ続けるのか

アップル製品の人気の秘密

Phone、MacBookをはじめ、世界中の人々を魅了し続けるApple社の製品。

日本時間の深夜に新製品が発表されるたび、ガジェット愛好家がこぞってデザインやスペックの感想や期待をSNSにアップする。毎年、新型iPhoneの発売日には、直営のアップルストアに長蛇の列ができる。何日も前から行列に並ぶ人や発売直後に購入できた人へのインタビューを、報道番組で観た人も多いのではないだろうか。

そんな、熱狂的なファンも多いApple製品を支えてきた、ある素材をご存知だろうか。

それは、アルミニウムである。

アルミニウムは、2000年代から現在まで多くのApple製品で使用され続けている

現在アルミニウムが使用されているApple製品

  • iPhone(13/13mini)
  • MacBook(Air/Pro)
  • iMac
  • Mac mini
  • iPad(Pro/Air/mini/無印)
  • Apple Watch(7/SE/3)

なぜ、Apple製品にはアルミニウムが長年使用され続けているのか。Appleのこだわりや飽くなき挑戦とともに、アルミニウムが持つ魅力を紐解いていきたい。

高い強度と耐久性を誇る削り出しアルミニウム

https://www.fayerwayer.com/2019/06/jony-ive-deja-apple/より引用

2019年までAppleのデザイン最高責任者を務めたジョナサン・アイブ氏は、アルミニウム合金の塊を削り出す加工技術を、筐体の製造にいち早く取り入れた。

これまでの常識にとらわれない切削加工のアルミニウムで製造されたMacBookやiPhoneは、これまでプラスチックのボディが主流だった工業製品の生産に革新をもたらした。

削り出したアルミニウムは切断や溶接を行っていないため、高い強度と耐久性を誇る。その剛性はレーシングマシンのパーツにも使われているほどだ。大量のデータを毎日持ち運ぶスマートフォンやノートパソコンの筐体に使用するには、申し分ない素材であるといえるだろう。

だが、アルミの切削加工は従来のプレス製法に比べ、製造に何倍もの時間がかかる。Appleはその弱点を資金力でカバーしている。大量の切削加工機を導入することで、数千万台の生産に成功した。

こうして発売されたのが、発売から10年近く経った現在でもAppleファンから高い評価を得ているiPhone5だ。

https://image.itmedia.co.jp/l/im/mobile/articles/1708/22/l_st_ip5-02.jpg#_ga=2.182997414.1097393049.1661398349-733783356.1661398349より引用

iPhone5は発売当時、わずか3日間で販売台数500万台を突破している。
IPhone5のヒットを受け、他社でもアルミボディのスマートフォンが続々登場した。

薄くて軽量なボディ

MacBookユーザーは、初めて本体を手にした時、その薄さに驚いた人も多いのではないだろうか。

マシンの常識を逸する薄さ・軽さの秘密は、アルミニウムで製造した筐体にある。

アルミニウム自体の軽さは、純度100%のアルミニウムである1円玉を例にすると伝わりやすいだろう。MacBookやiPadのボディに使われるアルミニウムが、マシンの軽量化を実現している。

Apple Watch series7には、アルミニウム製・ステンレス製・チタニウム製のモデルが存在するが、最も軽いのはアルミニウムを使用したモデルだ。

さらに、アルミニウムを使用することで、強度を保ったまま薄い筐体に仕上げることができる。

https://www.apple.com/jp/macbook-air-m2/より引用

本体の薄さを語る上で外せないのが、14年ぶりにデザインが刷新されたM2チップ搭載の新型MacBook Airだ。M2 MacBook Airは、厚み11.3mmと歴代のMacBook史上最薄のモデルで、M1以前のMacBook AirやMacBook Proのユーザーも手に取ると、その薄さに驚くだろう。

高級感漂うシームレスなデザイン

https://www.apple.com/jp/iphone-13/key-features/から引用

iPhoneやMacBookのユーザーに限らず、「Appleの製品」と聞くと、スタイリッシュで洗練されたデザインを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。

継ぎ目のない滑らかなデザイン、高級感のある控えめな光沢、冷たくてサラッとした質感。

デザイン性の高さに魅了され、長年Apple製品を愛用し続ける根強いファンも多い。

実は、前述した削り出しアルミニウムが、Appleがこだわり続けるデザインの実現に一役買っている。

MacBookは、1枚のアルミ板を削り出して成形することで、ムダな継ぎ目のないユニボティに仕上げている。また、切削加工による精密なデザイン技術で、プレス加工で起こるわずかなサイズのばらつきや歪みがなく、本体がより美しく仕上がる。

MacBook特有のツルッとした質感や、マットな光沢感も、アルミニウムが持つ素材の力と高い加工技術の賜物だ。

Apple Watch Series7はアルミニウム製のケースが最も安価なモデルだが、マットな質感がチープさを感じさせないデザインとなっている。

環境保全への取り組みでも注目されるアルミニウム

https://www.apple.com/jp/environment/より引用

アルミニウムの魅力は、ユーザー視点だけにとどまらない。ここ数年は、Appleが推し進めている環境保全の観点からも注目されている。

2018年、再生アルミニウム100%から作られたボディのMacBook Airが登場した。

再生アルミニウムを使用することで新しいアルミニウム鉱石を一切採掘することなく、ボディの製造が可能となった。現在も、MacBook AirやiPadなど、多くのApple製品の筐体に再生アルミニウムが採用されている。

Appleには、大きな目標がある。それは、2030年までに生産の過程で排出される温暖化ガスを実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現だ。

そのプロジェクトの一環として、グリーンアルミ(低炭素アルミニウム)が注目されている。

https://www.apple.com/jp/newsroom/2018/05/apple-paves-the-way-for-breakthrough-carbon-free-aluminum-smelting-method/

グリーンアルミとは、再生可能エネルギーで製造されたアルミニウムのことである。

Appleは、グリーンアルミにいち早く目をつけた。2018年にAppleはアルミニウムメーカーやカナダ政府・ケベック州政府とパートナーシップを組み、製造過程で二酸化炭素を排出しないアルミニウム開発を行うエリシス社に総額1億4400万ドルを投資した。

さらに2022年、エリシス社が研究開発した製法で生産されたグリーンアルミを大量調達した。
調達したグリーンアルミは、新型のiPhone SEへの使用を発表している。

各製品の製品環境報告書によると、Appleでは再生スチールや再生可能なパッケージの使用など、他にも多くの取り組みが行われている。
その中でも再生アルミニウムやグリーンアルミは、Appleが目指すカーボンニュートラルの取り組みを牽引しているといえるだろう。

Appleとアルミニウムの今後

https://www.apple.com/jp/apple-events/より引用

アルミニウムは、これまでApple製品の魅力を支える要となってきた。

Apple製品のアルミニウムが持つ魅力

  • 高い強度と耐久性
  • 薄さ、軽さ
  • 継ぎ目のない精密なデザイン
  • 環境保全

今後もグリーンアルミをはじめ、革新的な技術やデザインで、Appleユーザーからの大きな期待や、現代社会が抱える環境問題に応えていくことになるのではないだろうか。

これまでApple製品のアルミニウムについて関心がなかった人も、ぜひこの機会にアルミニウムが持つデザイン性や、機能性、質感に触れてみてもらいたい。

アルミニウムは熱を通さない素材だが、Appleが各製品に込めた情熱はアルミニウムを通して伝わってくるだろう。

参考記事(こちらは念の為掲載しています。)

ジョナサン・アイブ氏
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00141/070400054/

削り出しアルミニウムの特徴
https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/kadenya/archive/1130410.html

環境への取り組み
https://www.apple.com/jp/environment/

2018 MacBook Air製品環境報告書
https://www.apple.com/jp/environment/pdf/products/notebooks/13-inch_MacBookAir_w_Retina_PER_oct2018_J.pdf

グリーンアルミ開発への資金提供
https://www.apple.com/jp/newsroom/2018/05/apple-paves-the-way-for-breakthrough-carbon-free-aluminum-smelting-method/
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2415Y0U2A320C2000000/