切削加工とは?切削加工を依頼する前に最低限知っておくこと

切削加工を知ろう!

3Dプリンターが一般に普及しメディアで取り上げられる様になると、その自由な製造手法が話題になり、それまでの製法とは全く違い多種多様な形を自在に作る事が出来るとイメージされる様になりました。

工業の現場に精通していない一般の方であれば、「なんでも作れる」3Dプリンターは十分衝撃的な製造手法だと思われるかもしれません。

そこで試作品や量産品を製作しようと検討されている方の多くは、まず3Dプリンターをと考えがちですが、往々にして価格が高くなる事に驚かれます。

ですがそれは3Dプリンターも、実は昔からある様々な製造方法の1種類でしかなく、製造手法が数多く存在するのは、それぞれにメリット・デメリットが存在するからです。

その他の製法で作成する事で低価格で高品質というケースも多々あります。では、「物を形にする製法」にはどの様なものがあるでしょうか。

今回は最も一般的かつメリットも多い「切削加工」について、3Dプリンターとの比較を交えてご紹介致します。

切削加工とは?

前述の通り、部品の製作方法には3Dプリンターでの出力や射出成形、鋳造など様々な手法が用いられてきました。

その中で切削加工は、樹脂(プラスチック)や金属の塊を、工作機械を用いて削ったり切断したりしながら形を作る加工技術のことをいい、特徴としては、比較的精度の高い加工が短納期で可能な点が挙げられます。

切削加工には、加工物を固定する旋盤と加工物を削る切削工具を用いた旋盤加工やフライス加工、ボール盤と呼ばれる機械を用いて加工物に穴を空ける穴あけ加工などが有ります。

その他サイズや種類毎のねじ穴を作ったり、加工した箇所を滑らかにするリーマ加工や研磨・バリ取りにメッキ加工など後加工も可能です。

特に最近では、切削工具を上下左右動かす事に加え、加工物も立体的に動かしながら加工を行うる5軸加工機や、切削工具などの動きを完全にプログラムでコントロールするマシニングセンタの登場で、より高精度かつ複雑な形状の加工を、より短時間で加工できる傾向に有ります。

どのような時に切削加工をするのか!?

切削加工は工作機械を動かして1品毎に作成するので、金型の様な高額な初期投資は不要となり、多品種小ロットの生産や試作に向いた加工方法と言えますので、そういった点で1品物が得意な3Dプリンターとは一部競合関係に有ります。

また加工後の面粗度も用途に合わせて調整可能で、必要で有れば加工面に後加工で研磨を施したりメッキをしたりといった処理や、公差を±0.01などでは無く+0.00~0.02、-0.02~0.00といったプラス公差・マイナス公差で作成する事も可能です。

そうすることで別の部品との嵌合も可能なので、1つの部品だけで形を作るのではなく、複数の部品を制作し組み立てて複雑な形状のものを作成する、といった組み立て加工にも対応します。

切削加工のメリット・デメリット

では具体的に、切削加工にはどの様な特徴とメリット・デメリットが存在するのでしょうか。

メリット

品質の高さと安定性

切削加工の最大の特徴は、工作機械の種類にもよりますが基本的に加工精度が高く品質が安定し、金属であれば0.001㎜、樹脂であっても0.01㎜単位の精度で加工加工可能である点です。

これはマシニングセンタなどの工作機械はプログラムで動きがコントロールされているためで、コンピューターで1000分の1mm単位で切削工具や加工物の位置を制御できるため、高精度な寸法精度で安定して加工できます。

3Dプリンターはコンピューター制御のノズルで材料を噴出して積層させて形を作りますが、そもそものノズル径が0.1㎜程でありそれ以下の小さな加工は出来ません。

また、一度溶かした材料を重ねていく中で、固まり方の差や材料の流れ方の影響で同じ形のものを作っても製品毎の品質差が大きくなってしまいます。

そのため3Dプリンターは、あくまで試作レベルやそこまで高精度で作成する必要が無い場合に使用されることが多い製造方法です。

一方切削加工は、0.001㎜単位の精密さが要求される半導体装置や医療機器、電子部品といった分野にも用いられます。

自由な形状の加工が可能

自由な形状の加工が行える点も切削加工の特徴です。機械の加工可能な範囲であればさまざまな材料の厚みに対応し、複雑な形状であっても目的の形状に加工することが可能です。

特に5軸加工機など切削工具だけでなく加工物も動かす事の出来る加工機では前後、左右斜め方向など様々な加工が可能となります。

また加工に用いる切削工具の種類も豊富で、一気に数センチ単位の太い溝を掘ったかと思えば、0.01ミリの細い穴を空けたりといったことを同じ1工程で可能にするのも、工作機械用の切削工具のバリエーションが豊富である事が要因です。

3Dプリンターも補助剤と呼ばれる後から取り除く部分を作成することで、比較的自由な形を作る事が出来ますが、上方向から材料を積層させていくという製法上の制約を受けてしまいます。

多様な材料に対応可能

また樹脂から金属まで加工可能な素材の種類が豊富である事も切削加工の特徴です。

3Dプリンターで有れば一度溶かした材料を積層させて形を作る製法の関係上、熱硬化性(一度固まると再利用できない)樹脂では作成不可です。そのため汎用性の高いABS樹脂などがベースになりますが、より高性能な樹脂を使いたい場合などでも不可となる場合が散見されます。

また金属であっても粉末を焼き固める関係上、一部の物性値は大きく低下するので繰り返し使用する部品には使用できません。

一方の切削加工に適した素材の種類も多く、ほとんどの場合使用条件に適した素材を選ぶことができます。また基本的に1枚板や塊から削り出すので、ほぼ素材そのままの物性値・強度で作成する事が出来きるので、切削加工で作成すれば試作に止まらず製品として使用可能です。

低コストである

切削加工は機械が高額であったり、材料として金属や樹脂の塊を購入する必要が有るなど、一見高い金額が必要である様に思えますが、実際は低コストな製法として知られています。

これは加工が短時間で終了し、1製品当たりの作業費が格段に違うためです。

前述の通り、切削加工機はコンピューターを用いた自動制御で加工が進みますので、一度セットしてしまえば、後は切削工具を高速で動かしながら半自動で進みます。そのため加工自体より、最初に機械にセットするまでの段取りの方に時間が掛かる場合も多い程です。

特に量産を前提にした工場や製作所ではなく多品種少量生産に特化している金属製作所は、こういった工程も短く加工費も安く抑えるノウハウを蓄積しているので、短納期・低価格で対応可能となります。

そのため3Dプリンターの様に1層(0.1㎜)を印刷し、ある程度固まってからその上にさらに積層していく、という手法とはスピード感が全く異なるのです。

デメリット

もちろん切削加工にもデメリットは存在します。

条件次第では高コストとなる事も

削る素材はメーカー毎の規定のサイズが有り、切削加工ではそこから必要な部分のみを削り出して製造されますが、部品の材料費は削る前の体積に基づいて算出されるので無駄になる材料の体積が大きいほど、余計な材料費も大きくなります。

3Dプリンターは材料が無駄になる事はあまり無い製法なので、この点はメリットとなり得るでしょう。

またその機械の適正を超えた複雑な形状や高精度のものを作る場合は、加工時間が長くなり割高になることも有ります。そのため複雑な形状のものの制作は比較的新しい機械を持っている製作所の方が得意とする分野です。

刃物の摩耗

加工を行うと切削工具は摩耗し変化してしまいますので、管理を怠ると寸法や面粗度などが予定通り出ず、最悪の場合は加工中に折れたり欠けたりしたまま機械が動き続ける事があります。

そうすると、再度同じ工程をやり直したり一から再作成となるので、切削加工のメリットである短時間での加工が出来ず、価格のメリットが出ません。

そうした事態を避けるため、切削加工はこうした工具の細かい管理が必要な製法と言えます。

作業者にノウハウを求められる

コンピューター制御の機械任せの加工であれば熟練の作業者は不要なのか、というとそういう事では有りません。工作機械の特徴や癖を知り尽くした加工技術切削工具の知識、そして複雑な加工にも対応した段取りを行うために作業者はノウハウ求められます。

その点は3Dプリンターは、専門知識の無い一般の方であっても気軽に制作できるというメリットと言えるでしょう。

どこにどのように依頼するのか!?

この様に実は3Dプリンターで検討していた小ロット品も切削加工で行うことで、より低コスト・短納期・高品質で作成することが期待できます。

問題はどこに依頼するのが適しているか、という点です。

切削加工で使用する高性能のマシニングセンタや5軸加工機は、3Dプリンターの上位機種と比較しても遥かに高額な機械となり、一般家庭はおろか小さな工場で購入できる様な代物では有りません。

では大工場はというと、1品物より量産に特化していることが多く、そうしたノウハウを持っていない場合が多くなります。そもそも量産を前提とした工程の中に形状の異なる1品物を入れ込む事は、工場の可動という意味でマイナスになりあまり歓迎されないでしょう。

格安3Dプリント出力サービスが、切削加工も安く出来る訳

そこで「高性能の工作機械を保有しつつ、1品物に特化した制作代行サービス」が最も適した方法である、と言えます。

さらにその他の製法にも精通した3Dプリント出力サービス ツムリであれば、作りたい形状や精度・個数に合わせ、切削加工や3Dプリンター・光造形といった様々な製法の中から最適な手法を提案する事も、試作後の量産を見据えた製法のご紹介も可能です。

価格や精度面で製作を断念した加工品でも、3Dプリント出力サービス ツムリであれば可能ですので、是非一度ご検討してみてはいかがでしょうか。