3D金属プリント出力の加工種類と依頼方法について

【金属3Dプリンターでの金属加工について】

3Dプリンターは、パソコンなどで制作した3Dデータさえ有れば好きな形のものを作ることができる大変自由度の高い製造装置です。

この3Dプリンターには、樹脂やシリコンを材料に造形する「樹脂3Dプリンター」と金属で造形することができる「金属3Dプリンター」が有りますが、金属3Dプリンターは樹脂3Dプリンターに比べあまり世間に知られた存在ではありません。

ですが実は様々な用途で使用可能であり、既存の製法から切り替えることで大きなメリットを生むことも。

今回はそんな金属3Dプリンターについてご紹介していきます。

金属3Dプリンターの現状と可能性について

現在個人用として一般に販売されている所謂「3Dプリンター」は樹脂を材料とするものがほとんどで、一般層には3Dプリンター=樹脂(一部シリコン)と認識され普及してきたと言っても過言ではありません。

金属3Dプリンターは比較的融点が低い金属のアルミですら600度以上の温度が必要となり、また価格が約1億円から2億円以上と非常に高額な装置です。

そのため金属3Dプリンターは現在ほぼ工業用として使用されるに留まり、今後も一般家庭に普及するとは考えにくい存在と言えます。

ですが2020年8月に発表された「金属3Dプリンティングの世界市場(2019‐2025年)」によると、金属3Dプリントの市場規模は現在の400億円市場から2025年には800億円市場に成長し、その後も非常に高い成長率で拡大していくとのことです。

また現在の市場は欧州と北米が中心で、この2つのエリアだけで売上の過半数を占めます。日本市場は世界全体の10%にも満たない程度ですが、金属3Dプリンターは医療分野や航空産業などの基幹産業を中心に多岐にわたる需要が有望める存在です。

こうした世界的な需要拡大が日本に影響を与えないはずがなく、今後国内市場においても需要の拡大が期待されています。

金属3Dプリンターで対応可能な素材とは?

今後需要拡大が期待される金属3Dプリンターですが、強みの一つが扱うことのできる素材にあります。

金属を加工する方法として一般的な切削加工などで用いられる素材は鉄や鋼がメインですが、3Dプリンターはチタンやニッケル合金、アルミニウム、ステンレスなどで製作可能です。

これらは切削加工では加工が難しかったり不可能とされた素材ですが、高い性能を誇る金属です。

たとえばチタンは、比重が鉄の約60%、銅の約50%と非常に軽量でありながら強度は鉄の約2倍、アルミニウムの約3倍と非常に強い金属です。さらに酸や塩水に対する耐食性はプラチナに匹敵し耐熱性も高いなど大変優れた特徴が有ります。

この様に金属の中でもひと際高い特性を持つチタンですが、それ故に素材の値段が高く、削加工が難しい難削材のため切削加工には向きませんでした。

そもそも切削加工では素材から削り出すため、せっかくの高価な材料が大量に無駄になってしまいます。

チタンに代表される難削材の加工は非常に時間が掛かるほか、作業者に相応のノウハウが無ければ加工できませんし、切削を行う切削工具の寿命を著しく短いものにしてしまいます。

一般的に低コストの製造方法と言われる切削加工ですが、こうした難削材になると少々話が違ってくるのです。

またニッケルは非常に優れた耐熱性と耐食性で、航空機のエンジン部品やガスタービンなどの発電所向け部品、航空宇宙関連の部品などに用いられていますが、こちらも高温下での強度が強く熱伝導率が低いため切削加工が難しい難削材です。

その他鍛造金型などに使用されるマルエージング鋼、高温・高圧に対して優れた耐久性を備えたコバルトクロムや、単体の金属では最も高い融点を持つタングステンなども難削材となります。

名前が「錆びない」の意味であるステンレスも、耐食性と耐熱性に優れた高強度の金属で、切削加工時に熱が逃げにくいという特徴が有りますが、熱が逃げないまま高温状態が続くと加工完了後に温度が下がると寸法変化が起こり、高精度での加工は難しくなります。

つまり金属3Dプリンターで使用される素材の多くが、既存の加工方法では扱いが難しい金属で、そうした優れた素材で加工できる点は3Dプリンターの大きなメリットです。

金属3Dプリンター加工で用いられる方法について

一般的に金属3Dプリンターは金属粉を高温のレーザーなどで溶かしながら形を作っていきます。

焼き固める金属粉がどんな状態でどのように機械にセットされているのか、または焼き固めるレーザーなどの熱源の種類などで大きく分けて4種類あり、それぞれ得意不得意が存在しています。

パウダーベッド方式

装置の中の加工場所(ステージ)の上に金属粉末を敷き詰め、レーザーや電子ビームを照射して造形部分の金属のみを溶かして固めていく造形方式で、現在の金属3Dプリンターの主要な造形方法と言えます。

メリットは造形精度が高いという点、デメリットとしては導入するために高額の費用が必要で造形に時間が掛かかり、造形物の表面がざらついてしまうので後加工が必要である点です。

メタルデポジッション方式

必要な金属材料を噴射させたり次々と送り出しながら熱源で溶かし、溶かした金属を積層、凝固させていく造形方式で、金属粉末を溶かすレーザービーム熱源方式と、合金ワイヤーを溶かすアーク放電方式があります。

レーザービーム熱源方式は、ノズルから金属粉末を噴射させながらステージを移動させて部品の形を描きます。アーク放電方式は、金属ワイヤーを次々と送り出しながら先端に放電することでこれを溶かして積層していきます。

共にメリットとしては造形スピードが速く造形後に付着した金属粉末の除去作業も必要ないこと。さらに、一から造形するだけでなく、摩耗した部分の修復としても使用可能です。

一方、デメリットは造形できる形状に制限があり、造形精度もやや粗くなる点です。

熱溶解積層(FDM)方式

金属と溶けた熱可塑性樹脂(バインダー)を混ぜてノズルから噴射して積層します。

樹脂が形を作ってくれるので、金属を焼き固める工程を後にすることができ、樹脂を脱脂装置で除去して焼結工程で焼き固めれば完成となります。

脱脂・焼結で約20%縮小するため設計の難易度がやや高く、表面の後加工なども必要です。

バインダージェット方式

金属粉末をステージに敷き詰めるのはパウダーヘッド方式と同様ですが、そこに液体の結合材(バインダー)を噴射し、金属粉末を固めていく造形方式です。

バインダーを脱脂、焼結の工程を経て完成部品になります。

造形スピードが速く、また金属粉末が敷き詰められているので形を作る際に支えになるサポート材が不要で、複雑な形状の造形も可能です。

一方、脱脂や焼結の工程が必要でやや製作に時間がかかります。

この様に、金属3Dプリンターには様々な方式が有り、今後も新たな手法が発明されていくと考えられます。

金属3Dプリンターを使うメリットとデメリットについて

金属3Dプリンターは非常に自由度が高い製法と言えますが、加工形状や素材に大きな課題や問題が無い製品であれば、切削加工で作成する方が低コストで作成することができます。

これは1枚ものの素材から削り出す切削加工品の方が、粉末を焼き固める3Dプリンターより強度や精度・加工時間でメリットが多いためです。

また本格的に量産となった場合、最も効率的な製造方法は金型成型です。

ですが複雑な形状やアンダーカット構造(金型から取出せない凸形状や凹形状のこと)のあるデザインや切削工具が進入できない構造の部品は、これらでは加工する事が出来ません。

また仮に加工可能な形状でも、切削加工では段取りや加工途中の微調整含め加工時間が伸びてしまう場合や複雑な形状、難削材の加工など製造が難しい製品は3D金属プリンターで作成することが望ましいでしょう。

また粉末を焼き固めるという作成方法上、どうしても気になる強度の面で見ても、元々強度の高い金属であれば用途に対し十分な強度が出る場合も多いほか、金属3Dプリンターであれば強度が必要な箇所のみ材料の積層密度を変更し、一つの造形物の中で場所によって厚みや密度を変更することも可能です。

強度が必要な部分は高密度で分厚くし、その他の場所は金属粉の充填率を調整して密度を低くすれば、強度を保ったままむしろパーツの軽量化などができます。

これは素材の密度を変更できない切削加工や金型品と比較して制作の柔軟性という意味で大きなメリットでしょう。

金属3D造形のメリットを活かした提案

例えば商品化を前提に試作を行う場合、1品1様の試作品を少しずつ形状を変えて製作するのも、製造上の制約を受けることなくデータの微調整のみで可能です。

また既存部品の軽量化や、材料を鉄からチタンに変更したいなどの仕様変更が必要な場合、細かい修正に簡単に対応可能で材料密度を変更でき、尚且つチタンなど切削加工では難しい素材の対応も可能な3Dプリンターが生きる場面も多いでしょう。

更に苦手とされる量産対応に対しても、3Dプリンターで製品ではなく簡易金型を作成することで、製造装置を作る側としてプレス工法や射出成形工法に利用することも可能です。

この様に金属3Dプリンターを使えば、難削材が必要な製品の作成や試作品などの小ロット生産、さらには簡易金型として利用することで量産対応も可能であるなど、モノづくりの現場の様々なポイントで活用できる可能性が有ることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

金属3Dプリントはどこに依頼すればいいの!?

一言で金属3Dプリンターと言っても様々な作成方法が有り、それぞれに得意不得意が有る点、そして切削加工や金型成型と言った他の製造方法の方がメリットが有る場合も少なくない点は考慮すべきでしょう。

そこで必要となるのが様々な加工技術に精通し、自社の工場で各製法で作成可能である点、そして試作段階ではこの製法、量産の際にはこの製法と、状況に合わせたご提案ができるノウハウを持っているかどうかという点です。

そこで「自社の工場で各製法で作成可能であり、様々な状況に合わせたご提案ができる制作代行サービス」が最も適した方法である、と言えます。

金属3Dプリンターやその他の製法にも精通した3Dプリント出力サービス ツムリであれば、作りたい形状や精度・個数に合わせ、様々な製法の中から最適な手法を提案する事も、試作後の量産を見据えた製法のご紹介も可能です。

また3Dデータの作成も単に形になればよいという訳では無く、製造を考慮した最適なデータであれば、製造コストを下げる事にも繋がります。

そうしたデータ作成から最終量産までワンストップで代行できる格安3Dプリントサービスを是非ご活用下さい。